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京都地方裁判所 昭和60年(わ)781号 判決

本籍並びに住居

京都市西京区御陵北山下町五二番地の一

農業

小原靖弘

昭和七年五月二一日生

右の者に対する相続税法違反、所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官肱岡勇夫、弁護人(私選)石川良一、同吉田薫、同酒見哲郎各出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金四〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は

第一  澤田圭司、澤田昭子、全日本同和会京都府・市連合会会長鈴木元動丸及び同連合会事務局長長谷部純夫らと共謀の上、右澤田圭司の養父であり、右澤田昭子の実父である澤田幸太郎が昭和五七年一月五日死亡したことで基づく右澤田圭司、同澤田昭子の両名の相続財産にかかる相続税を免れることを企て、右澤田圭司の相続財産にかかる実際の課税価額が一億三、六三二万八、四七三円で、これに対する相続税額は三、七三七万八、〇〇〇円であり、右澤田昭子の相続財産にかかる実際の課税価額が一億八五六万六、一〇五円で、これに対する相続税額は、二、九七九万六、三〇〇円であるにもかかわらず、非相続人澤田幸太郎が有限会社同和産業(代表取締役鈴木元動丸)から一億七、三〇〇万円の債務を負担しており、右澤田圭司においてそのうちの九、三〇〇万円を、右澤田昭子においてそのうちの八、〇〇〇万円をそれぞれ承継したと仮装するなどした上、同年七月三日、京都市右京区西印上花田町一〇番地の一所在所轄右京税務署において、同署長に対し、右澤田圭司の相続財産にかかる課税価額が四、三三七万四、四七三円で、これに対する相続税額は五一九万二〇〇円であり、右澤田昭子の相続財産にかかる課税価額が三、一五八万八、七〇五円で、これに対する相続税額は三七七万八、二〇〇円である旨の虚偽の相続税の申告書を提出し、もって不正の行為により、右各相続にかかる右澤田圭司の正規の相続税三、七三七万八、〇〇〇円との差額三、二一八万七、八〇〇円及び右澤田昭子の正規の相続税額二、九七九万六、三〇〇円との差額二、六〇一万八、一〇〇円をそれぞれ免れた

第二  自己の所有する京都市西京区御陵塚ノ越町七番地の田を昭和五六年一〇月七日八、六八六万八〇〇円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、前記鈴栄元動丸及び長谷部純夫らと共謀の上、自己の実際の五六年分分離課税の長期譲渡所得金額は六、二五一万七、七六〇円、総合課税の総所得(営業所得、農業所得、不動産所得)金額は一九三万四、八七〇円で、これに対する所得税額は一、四二五万九、八〇〇円であるにもかかわらず、株式会社誠組が前記有限会社同和産業から六、〇〇〇円の借入れをし、その債務について自己が連帯保証人となり、右誠組が破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡し、その譲渡収入で同五七年一月二〇日に全額履行したが、右誠組に対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、同年三月一五日、同市右京区西院上花田町一〇番地一所在所轄右京税務署において、同署長に対し、自己の五六年分分離課税の長期譲渡所得金額は二五一万七、八〇〇円、総合課税の総所得金額は一九三万四、八七〇円で、これに対する所得税額は五一万一〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税一、四二五万九、八〇〇円との差額一、三七四万九、七〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  鈴木元動丸の検察官に対する供述調書(謄本、二通)

一  大蔵事務官作成の報告書(謄本)

判示第一の事実につき

一  被告人の検察官に対する供述調書(検15、16)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(謄本、二通)及び証明書(謄本)

一  京都市西京区長作成の戸籍謄本(謄本)

一  西川平(二通)、林政男及び澤田昭子(二通)、澤田圭司の検察官に対する各供述調書(謄本)

一  濱元涼子の検察官に対する供述調書

一  長谷部純夫の検察官に対する供述調書(検32《謄本》、検33《抄本》)

判示第二の事実につき

一  被告人の検察官に対する洪述調書(検24、25)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書及び証明書

一  田代和子(謄本)、谷本一男及び佐藤泰雄の検察官に対する各供述調書

一  黒川敏及び寺本広嗣の大蔵事務官に対する各供述調書

一  長谷部純夫の検祭官に対する供述調書(謄本、検28)

(法令の適用)

判示第一の所偽

刑法六五条一項、六〇条、相続税法六八条

判示第二の所為

刑法六〇条、所得税法二三八条

観念的競合(判示第一の所偽)

刑法五四条一項前段、一〇条(犯情の重い澤田圭司に関する相続税法違反の罪の刑に法定の加重)

刑種の選択

いずれも懲役刑と罰金刑とを併科

併合罪加重

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重)、四八条

労役場留置

同法一八条

執行猶予(懲役刑)

同法二五条一項

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 松丸伸一郎)

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